桜が満開の安倍文殊院境内を歩いていると、本堂向かって右手に仏足石が安置されているのを見つけました。その文様をよく見てみると、一頭三尾の奇妙な魚が描かれているではありませんか。
仏足石に描かれた魚。
魚は生産を意味しているようです。
昼夜眠らないとされる魚を、日夜精進する仏の道に掛けています。そういえば、仏壇の前に置かれている木魚にも同じような意味が込められていることを思い出します。
仏足石に描かれる魚は、繁栄の象徴としての双魚紋(二尾の魚)が通常のようですので、ここに描かれている魚の紋様は珍しいと言えるのではないでしょうか。
安倍文殊院表門の桜。
朱塗りの門に桜のピンク色が映えます。
安倍文殊院の仏足石。
お釈迦様の足跡の模刻が、安倍文殊院の境内に安置されています。
足指の先には渦巻紋様が見られますが、これは太陽を象徴しています。遍く万人を照らす太陽のようにといった思いが込められています。東大寺の毘盧遮那仏を思い起こしますね。
ここにおいて、安倍文殊院は華厳宗東大寺の別格本山でもあることを再認識させられます。
干支の動物を模ったジャンボ花絵の横に佇む不動堂。
境内の至る所に桜の花が開花しています。
安倍文殊院で見られる左足の仏足石は、インドグプタ朝5世紀の作とされます。
模刻ではありますが、歴史ある仏足石のデザインが手に取るように分かります。
仏足石の真ん中には千輻輪紋が描かれています。
仏法が太陽のように万遍なく行き渡り、衆生の苦しみを救うことを意味しています。仏教の世界で車輪のようなものを見ると、転法輪のことを思い出しますね。
その右側の紋様は螺貝紋でしょうか。
螺貝紋は法螺貝の変形とされ、釈尊の教えが世界の隅々まで響き渡ることを意味しています。吉野山の修験道や、 正午を告げる長谷寺の法螺貝が頭の中に浮かびます。
如来の三十二相の中には、足安平相というのがあって、如来の足には凸凹が無く、どのような地面でも足がしっかりと着くと伝えられます。いわゆる偏平足ということなのでしょうが、しっかりと大地を踏みしめて教えを広めていったお釈迦様の姿が偲ばれます。
菩提樹の元で悟りを開き、そこで満ち足りた思いをかみしめたお釈迦様。
そこへ天部の梵天がやって来て、その教えを自分だけで満足せず、悩み苦しむ衆生のために説いてあげてほしいと願い出ます。この梵天勧請があったからこそ、大乗仏教の発展へとつながっていったと言われます。
仏足石の魚の紋様に目が留まった今回の安倍文殊院参拝。
仏足石は様々なメッセージを私たちに語り掛けてくれます。
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